『電車ごっこ』
最も重いタイプの筋ジストロフィー患者の終末期病棟での遊びに、『電車ごっこ』というものがありました。先頭の電動車いすが、後ろに連なる手動車いすを引っ張る構造です。構音筋障害のためにまともに声が出ないのですが、何周も回ってはしゃぐ様子が楽しげで、少しホッとする一方、違和感のせいで妙な半笑いが浮かびました。病棟主任は、「先頭から順に死んでいく事を彼らはみんな知っている。代替わりするんだよ。列の順番は彼らが自ら決めている」と呟きました。
混じりけも逃げもないリアリズムの、あまりの透明度の高さを前にたじろぎ、足元を失ったように感じましたが、これはきっと彼らが日常的に感じているもの。文字盤や視線入力装置で会話を試みたところ、多くの方が病の意味や理不尽な運命に憤怒する時はどうに過ぎていました。「来世はギタリストだ。でなきゃ、それこそ理不尽だ」と仰っていた、ジミヘン好きの方が記憶に残っています。
2026年04月21日 15:19